第3話 アスレティックトレーナーという仕事 〜前編〜
アスレティックトレーナーとは
今回は、2016年当時の僕が綴っていた文章を載せる回(前編)となります。当時の記事について現在(2022年)の僕が思うことは次回(後編)投稿となります!
アスレティックトレーナーという仕事①
皆さんこんにちは!
第2回目のアスレティックトレーナーに関するお話となります。
今回はアスレティックトレーナーという仕事の中で、私が保有する日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPOAT)に関する注意していただきたいお話です。
よく勘違いされやすいのが、ATになることで「マッサージができる人」や、病院・接骨院・治療院などで実施されている「電気療法ができる人」と解釈されるケースがしばしば見られます。
アスレティックトレーナーって「治療家」のことを言うのではないかと・・・
私が学生の時が正にそうでした。
ここでちょっと日本のトレーナー歴史について・・・・
競技者のコンディションをより良好な状態にする役割は、日本でも1930年前後より行われていたのですが、当時の日本のトレーナーが行っていたのは競技者への「マッサージ」でした。1964年の東京オリンピックにおいて約100名のトレーナーが参加したことを境にマッサージ師の資格を有する人たちがトレーナーとして徐々にスポーツ界に浸透していったようです。しかし、そのマッサージを中心とした活動に変化を与えたのは米国のトレーナーでした。米国におけるトレーナーは、正式にはアスレティックトレーナー(AT)と呼ばれ、その役割はマッサージを中心としたものではなく、スポーツドクターとの緊密な連携の下に、スポーツ外傷・障害の予防、救急処置、リハビリテーション、再発予防を総合的に管理するための教育を受けていました。それから、1975年頃になり米国から日本に「テーピング」、応急処置としての「アイシング」、「ストレッチング」の普及が始まります。その後、1994年に国内でアスレティックトレーナー養成事業が始まります。ここからJSPOAT資格(当時日体協AT)が登場しました。
日体協AT資格が登場する以前は、マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)以外に、鍼灸師や柔道整復師、理学療法士などの国家資格保有者達がトレーナーとして活躍していることがあり、国家資格者として電気療法や徒手療法による「治療行為」を用いる人もいました。
このような背景から、日本ではトレーナーというとマッサージや電気療法をするといった、選手にとって受動的なコンディショニング専門家(治療家)という認識が強い傾向にあるのではと私は思います。しかし、私が保有するATの資格のみで、マッサージや電気療法などを行うことはできません。そのような行為を「医業類似行為」と言い、それを実施するにはマッサージ師、鍼灸師、柔道整復師、理学療法士などといった国家資格の業務範囲において実施可能な行為となります。
ATとしてもそのような行為が可能であれば、活動範囲が広がるのですが、AT資格は民間資格のため、医療に関わる行為を許可する「免許」ではないのです。
あくまで、ATは、「公認スポーツ指導者」としての役割であり、「医療資格」ではありません。
であれば、ATを取得することはどんなメリットがあるのか私なりに説明します。
AT資格は『ケガ予防』のスペシャリストと言えます。
また、ATの勉強をするにあたり
「競技スポーツ」についてよく理解することが可能となります。
ちなみに私は柔道整復師免許を所有しています。柔道整復師に関して言えば、同じ柔道整復師仲間に、競技スポーツをよく理解している者は非常に少なく、スポーツ選手を接骨院で治療するにあたっても、スポーツ現場において必要なトレーニング方法や、セルフケアの仕方、健康管理、予防対策などは、正直なところ弱い印象があります。それでも、治療を求めてスポーツ選手が来院するケースはしばしば見られます。痛みの治療に関しての専門家ではあっても、再発予防、傷害予防といった取り組み(トレーニング、ストレッチ、アイシング、テーピング、健康管理方法)についてはATの方が優れていると私は強く感じています。
ケガを全て防ぐことは不可能かもしれません。しかし防げたはずのケガに関しては、予防をいかにしていたかどうかがポイントとなります。
例えば、柔軟性不足による肉離れや、オスグット病などの慢性障害は柔軟性不足だけでなく、筋力不足や、日々のコンディショニング不足などが原因となることがしばしば見られます。
こういったケガに対して、日頃からの正しいストレッチング指導や、筋力トレーニング指導、正しいアイシングなどのコンディショニング指導を事前に実施することにより、十分に予防可能です。
そうすれば、治療が必要なくなるわけです。誰だってケガはしたくありません。ケガで、好きなスポーツ活動を休まざるを得なかったり、思うように競技に集中できなくなるのは、選手にとって非常に辛いことです。治療者も必要であると思いますが、やはり治療が必要ない状態を維持する、ケガを最小限に防ぐことがスポーツ選手にとって重要なのです。
繰り返しになりますが、ATは「治療者」ではありません。
治療が必要ない状況をつくるために、事前に予防に徹するスペシャリストです。
(注:国家資格を保有しているATの業務の中には治療業務も兼務しているケースはありあますが、ここではJSPOAT資格のみの場合というお話です)
ついでに、私が活動する川平ATR(当時勤務していた ‘ 仙台大学川平アスレティックトレーニングルーム ' のこと)での予防活動について紹介します!
①定期的な予防講習会
⇒脳震盪、熱中症、感染症、栄養、コンディショニング(アイシング、ウォーミングアップ、クールダウン)について
②WBGT(暑さ指数)測定・掲示、
⇒測定結果を掲示するだけでなく、指導者や選手に対して注意喚起として声がけ
③健康相談による傷害早期発見
⇒身体に不調があった場合は早期に相談に乗り、傷害の発生を防ぐために対策指導(練習量の調整、ストレッチング、筋力トレーニング、アイシングなど)
④練習や試合見学
⇒競技特性、チーム特性、選手個人の特性やクセなどを把握し、想定される傷害への対策を提案
⑤傷害予防トレーニング実施
⇒ウォーミングアップ、クーリングダウン方法の提案
体幹トレーニング提案
練習前後の予防トレーニング提案
⑥傷害への早期対応
⇒起きてしまった傷害への早期対応(応急処置・評価)により、その後の競技へ向けた安全な復帰プラン提案することで、ケガの重症化を防ぎ、早期復帰を可能としています
⑦競技復帰に向けたアスレティックリハビリテーション
⇒傷害発生後、関節可動域、柔軟性、筋力などが十分に回復していないと、思うようにプレーできないばかりか、二次的なケガへ繋がります。また、ケガの原因が良くない動作(フォーム)によるものであれば、復帰後も再発しやすくなるため、動作改善指導も必要です。これらを予防するためにしっかりとしたアスレティックリハビリテーションを実施してから復帰へ導きます。
(医療機関では、このアスレティックリハビリテーションが非常に少ない、あるいは全くないこともあり、ATが十分に活躍できる部分です)
⑦再発予防テーピング実施
⇒競技復帰時に、再発予防を目的としたテーピング
以上のような活動が主な予防活動です。
これが全てではありませんが、「JSPOAT」資格のみでこの活動は可能です。
スポーツ活動において傷害発生してしまうことは、チームにとっても、選手にとっても、選手保護者にとっても望ましいことではありません。
安全なスポーツ活動を実施するための予防スペシャリストがJSPOATであり、アスレティックトレーナーとして重要な役割です。
2回目(前編)のお話はここまで!!
以上です
だいぶ前の自分の投稿で、若いなぁ〜と感じるところもありますが、6年前も今もさほど大きくは変わらないところがほとんどですね!今回記事について今思うこと(後編)は、次回!!
お楽しみに!!
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